部品特性に適した輸送ルートや荷姿、最も効率的な輸送モードを提案

部品事業本部では、電気自動車「新型日産アリア」に使用する部品の試作品供給から量産立ち上げまでを担いました。世界各国の部品サプライヤーとエンドユーザーである日産自動車の間に立ち、商流や物流を構築し、お客様へのジャストインタイム供給を実現することで、遅滞ない新車の立ち上げに貢献しています。(古川)

日産自動車は車の電動化や知能化を経営戦略の中核に据えています。日産トレーデイング(NITCO)は世界各国のEV・先進技術部品サプライヤーと連携し、その商物流スキームを構築することで、日産の戦略を支えています。昨今、電気自動車や自動運転技術の普及にともない、駆動用バッテリーや電子部品など、高度な部品の取り扱いが増えています。そんな中で、部品の特性に最も適した輸送ルートや荷姿、陸海空を駆使した最も効率的な輸送モードを提案し、お客様へ必要な時に必要な量の部品を提供しています。(小川)

とくに高度な電気部品の輸送や保管には、細心の配慮が必要です。例えば危険部品であるバッテリーは、輸送時の温度管理や防爆倉庫での保管と安全管理などのきめ細かな荷扱いが求められます。商社であるNITCOでは、単にモノを運ぶだけでなく、部品の品質の担保や供給能力の確保まで、サプライチェーンに関わるあらゆる課題に取り組んでいます。(古川)

日産のグローバル戦略車であるフラッグシップEV「日産アリア」。その立ち上げプロジェクトでは、量産に使う800点もの部品を輸入、供給する必要がありました。日産自動車と各部品の特性にあわせた輸送荷姿を設計し、生産に合わせた受発注スキームを構築することで、日産アリアの安定的な生産を支援しました。これは日産自動車のこれまでのプロジェクトの中でも特に規模の大きなものです。規模が大きいだけでなく、新規のサプライヤーも多数関わるプロジェクトとなりました。(小川)

次々と発生する課題を解決し、適性品質の部品をジャストインタイムで供給するために

NITCOに与えられた使命は、EUやアメリカ、中国、タイ、韓国、ベトナムといったグローバルに存在するサプライヤーが生産した部品を、日産アリアを生産する栃木工場へ供給する商物流スキームを構築することです。それらの部品を輸入し、当社が管理する宇都宮、日産の本牧基地、栃木工場周辺の多数の倉庫に保管し、日産自動車からのデイリーオーダーにあわせて栃木工場やサプライヤーにジャストインタイムで供給する。そのための供給ルートを作り、サプライヤーが世界のどこにいても、日本国内からの調達とほとんど同じ感覚で部品を購入できる仕組みを構築しました。(古川)

まずはお客様の仕様に合わせた試作部品を調達し、国際輸送に耐えうる荷姿を設計する必要があります。高度化された電子部品は、ソフトウェアの設計変更を適切に管理する必要があります。このように量産開始直前まで、きめ細やかな仕様や品質の管理が求められました。(小川)

部品事業本部内のチーム連携も重要です。品質管理チームとともに、お客様の要求通りの部品を供給するための品質管理を行うことも業務のひとつです。サプライヤーから新しい部品が出ると、品質を保証するための帳票をチェックします。日産自動車が求める品質水準は高く、部品の設計変更が度々起こります。納入する直前まで何度も修正を繰り返し、ようやく最終形になるのが通常で、場合によっては輸入した後で仕様変更となり、慌ただしく業者の方に修正をお願いすることもあります。

また荷姿設計のプロフェッショナルである物流エンジニアリングチームの協力のもと、サプライヤーからの荷姿情報をもとに、輸入の可否をチェックすることも重要な仕事のひとつです。荷姿の修正が必要な場合は修正依頼をし、コスト、品質ともに最良の形で輸送を行います。万全を期しながらも、日本に届いた後で部品に傷がついていたり、ゴミがついていたりすることが判明し、そのまま納品できないこともあります。時にはコンテナの天井に穴が空いていて、部品が水浸しになっているなんてこともあります。貿易業務では想定外のことが常に起き、何事もなく進むほうが珍しいくらいです。(古川)

コロナ禍での様々な困難を乗り越えたことで成就したプロジェクト

日産アリア立ち上げプロジェクトはコロナ禍により、海上輸送の遅れや半導体不足が発生し、サプライチェーンが大きな影響を受けました。直近ではマレーシアの大雨で道路が寸断され、サプライヤーから部品を出荷できないなんてこともありました。その部品を中国で組み立てする予定だったのですが、上海の空港職員がコロナ感染し、空港を利用できず、スケジュールが大幅に遅れてしまったこともあります。(小川)

車は一台あたり20,000~30,000の部品が使われており、1点でも欠けてしまえば製造できません。そのためどの仕様の部品を何個、いつまでに調達できるのか。事前にしっかり計画を立て、その後も進捗を常に確認し続ける必要があります。私たちが現地を直接訪れ、サプライヤーと綿密に打ち合わせをすることもあります。ところが今回はコロナ禍の影響を受け、それもできませんでした。電話やメール、オンライン会議などを駆使し、時差もある現地のサプライヤーと密なコミュニケーションをとることに苦労しました。(古川)

電気自動車の生産をサポートすることで、クリーンで安全な社会の実現に貢献

新車の立ち上げ時には、様々な課題が噴出します。今回のプロジェクトでは、日産の本社生産管理部門や日産栃木工場の方々と定期的にミーティングを持ち、皆で協力して様々な課題を解決してきました。その結果アリアが無事、12月に立ち上がったことを本当に嬉しく思っています。NITCOが量産開始に支障なく部品を供給できたことについて、工場のみなさんからも感謝の言葉をいただきました。(小川)

商物流スキーム構築の過程では苦労も多いですが、自分たちが供給した部品で製造された車によって、多くの方が安全で快適なドライブを楽しんでいただけていると思うと、感慨深いものがあります。とはいえアリアも生産が立ちあがったばかりで、生産台数の拡大ともに、今後も部品を供給し続ける必要があります。また、ヨーロッパやアメリカ向けの輸出車両の生産のためのプロジェクトも立ち上がります。その量産開始に間に合うよう世界中のサプライヤーと調整、準備を今まさに行っているところです。(2022年1月時点)今後も部品の安定供給を通じて電気自動車の生産を支えることで、クリーンで安全な社会の実現に貢献していきたいと考えています。(古川)

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日産グループはもとよりグループを超えたお客様に、グローバルなトレード&ロジスティックスのノウハウを活かし、試作から量産~補修部品まで幅広く供給しております。