世界中から試作品の土台となる鋼板の調達を担う

日産トレーデイング(NITCO)は日産自動車のグローバル拠点で立ち上がる新車向けの試作鋼板を、世界の大手鉄鋼メーカーから調達する仕事を請け負っています。日産では海外で新車を作る際、試作品は実際に量産する国の材料を使って日本で作ります。その試作品のために使う鋼板を、世界中の鉄鋼メーカーから調達することが、私たち鉄鋼グループ鋼板試作チームの仕事です。

チームのメンバーは現在5人。一人ひとりが一つのプロジェクトを担当し、出荷情報や通関書類の確認から、通関や配送手配の依頼までデリバリーの進捗管理を行っています。(今井)

膨大な部品に使う様々な種類の鋼板の貿易、輸送を同時に管理することは非常に複雑な仕事ではありますが、その分、世界各地の自動車の礎を構築している、という大役を担っているチームと言えます。(岩井)

想定外のことが起きるなか、いかにお客様の期待に応えるか

鋼板試作チームの仕事は、想定通りにものごとが進むことはまずありません。現在、コロナ禍で世界中の交通インフラやサプライチェーンに障害が起きているように、物流には常に事故やトラブルのリスクがつきまといます。試作品を作る部品メーカーは試行錯誤を重ねているため、途中で材料を変えたいという要望もよくあります。

すでに現地の港に部品がついた段階でキャンセルとなり、その対応策に頭を悩まされることもあります。鉄鋼メーカーにとって試作品用の鋼板はレギュラーの仕事ではないため、突然の新規発注にすぐに対応していただけるわけではありません。そのような想定外の出来事や困難のなか、少しでもお客様の期待に応えられるよう、我々のチームは日々の業務に取り組んでいます(今井)

大きな経験となったヨーロッパの新車プロジェクト

私が鋼板試作チームに入り最初に携わった大きな仕事が、ヨーロッパの新車プロジェクトです。欧州の主力車種のフルモデルチェンジのために、ヨーロッパ各地の鉄鋼メーカーから材料を調達し、日本の金型、部品メーカーに納期通りに納品する。それがミッションでした。

基本的に海外の鉄鋼メーカーとのやり取りは、NITCO現地法人の担当者が行います。通常は日本で、現地法人の担当者とメールや電話でやり取りし、部品の出荷状況などを確認します。輸送を担当する日本の輸送業者の現地法人の方に、この時期にこれくらいの貨物を出す予定なので、事前に準備できることは進めておいてほしいと、根回ししておくことも大事な仕事です。それによって少ししでもスムーズに納品できるからです(岩井)

UKの現場まで出向き、混乱していた状況を把握して整理

NITCOの現地法人のメンバーに加えて、このプロジェクト専任要員として私と岩井がUKに出張し、仕入先を訪問しながら、部品一点一点についてUKにあるのか、輸送中なのか、通関で配送の指示待ちなのかと、ステイタスを確認しました。そのうえで優先順位をつけた管理表を作成し、それをベースに出荷手配をすることにしました。エクセルで作った進捗管理表を毎日にらみながら、納品が終わったものからグレーに色を変えていくのですが、それが少しずつ増えていくのが日々の喜びでしたね。(今井)

ビックプロジェクトの経験が大きな自信と力になる

最初の発注から最後の納品まで、1年半ほどかけて、なんとかこのプロジェクトは終了しました。無事、部品メーカーが必要とする鋼板を調達でき、新車の立ち上げに貢献できたことは嬉しかったですね。ただこの仕事は日々、予想もしていないことが起き、お客様からクレームを受けることもよくあります。

今回のプロジェクトでも、どうしても予定通りに出荷されなかったり、出荷された内容が発注書と違ったりということが起きました。そのような時、お客様に状況やリカバリー案を説明するなど、結果だけでなくプロセスをきちんとお伝えすることが大事です。今回のプロジェクトでも、毎週お客様とミーティングの機会をもうけ、常に最新の情報を報告、共有することを心がけていました。(今井)

当時は大変でしたが、大量のオーダーをさばくことで、貿易実務の知識を短期間に身につけたことが、今取り組んでいる東ヨーロッパの試作材手配でもおおいに活かされています。(岩井)

世界の新車の立ち上げに関わっている誇りが業務の糧に

物流は滞りなく動くことが当たり前で、納期通りに届くことが大前提です。よって鋼板試作チームが必死で努力し、納期通りに収めても、ことさら高く評価されるわけでもありません。とくに今はコロナ禍で物流が混乱し、ロックダウンなどで海外の鉄鋼メーカーの稼働率もさがっています。そのような自分たちにはどうすることもできない状況のなかでも、最大限努力し、ベストなかたちで納品する。メンバーはそんな誇りをもって日々の業務に取り組んでいます。(今井)

この仕事は発注から納品までの管理を担当者が一人でこなします。予算内のコストでいかに納期までに間に合わせるか。様々な要素を考慮しながら、自分で輸送プランを組み立てなくてはなりません。ただ何より、苦労して調達した部材を使って作られた車が発売されたと聞くと、感慨深いものがあります。今後もさらに力をつけ、世界の新車立ち上げに貢献しNITCOとしての新車試作ビジネスの実力を様々な人に知ってもらいたいと考えています。(岩井)

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日産自動車及びアライアンスグループである三菱自動車、ルノーの国内・海外工場及び部品メーカー向け鉄鋼製品、原料・非鉄金属、化学品等 の自動車用材料供給、情報管理及び材料のリサイクルや電力販売などの環境関連事業を通じてアライアンスグループの競争力向上及びカーボンニュートラルの実現に向けて貢献しています。