開発途上国に1台でも多くの救急車を届け、一人でも多くの命を救いたい

日産トレーデイング(NITCO)では、直販ビジネスの一環として、日本のODA無償資金協力プロジェクトに、車両を供給する事業に取り組んでいます。日本は国際社会の平和と安全、繁栄のために貢献しようと、開発途上国に対する開発協力を積極的に推進しています。そのうえで必要な救急車や警察車両などをJICA経由で供給する。それによって開発途上国の安定と発展に貢献することが、私が所属する自動車事業本部 マーケティング&セールスグループ 国連・NSCチームのミッションのひとつです。

現在、世界には196の国と地域があります。そのうち飢えや貧困、食糧や飲み水の不足、教育や医療の不備を抱える国や地域が146に及ぶと言われています。そのような開発途上国の発展に貢献することは、SDGsが掲げる持続可能な世界の実現のうえでも重要な取り組みです。

現在、多くの開発途上国が救急車の援助を必要としています。とくにコロナ禍により、救急医療や患者を輸送するニーズが世界的に高まっており、アジアや中南米、アフリカなどの発展途上国の多くが、一台でも多くの救急車を必要としています。そのような状況に応えるため、JICAも開発途上国への救急車の提供を猛スピードで進めています。実際に例年、救急車の入札は年間100台未満のところ、2021年は2倍となる200台以上の入札がありました。

とはいえコロナ禍の緊急事態宣言で、日本も一時は経済や流通機能がストップしてしまいました。世界的な半導体や部品不足もあり、自動車メーカーは生産台数が制限されています。そのような状況のなか、救急車を必要としている国に一刻も早く届けられるよう、我が社も最善を尽くしています。

国内商社と協力しながら、開発途上国が求める車両を用意する

NITCOはこのプロジェクトにおいては、商社というより、車両を供給、販売するメーカー寄りの立場で仕事をしています。我が社はもともと、アジアやアフリカ、中南米などの国々に日産車を直接販売してきた実績があります。そこで培った輸出手続きや船の手配などのノウハウを活かすことで、開発途上国が必要とする車両をスムーズに輸送、手配することが可能なのです。

また日産自動車との密な関係を活かし、必要とする車両をタイムリーに生産し、必要な装備をつけたうえで海外へ出荷する。さらに販売店と協力して、アフターサービスまで担う。そのような日産車両にかかわるあらゆるサービスを一括で提供できることも強みです。

世界に日産車の素晴らしさを伝えるために

JICAのプロジェクトに実際に入札するのは、NITCOとは異なるいくつかの国内商社です。このプロジェクトへの参加は、社会貢献の側面を持ちつつ、これから発展する世界の国々の人々に日産車の良さを知っていただく貴重な機会と捉えています。そのため自動車事業本部も国内商社と協力し、少しでも日産車が落札されるよう努力しています。

例えば、医療機材の架装そのものは専門の会社が行います。ただ入札の際に、商社から架装のための車両サイズや構造を教えて欲しいとの問い合わせが度々寄せられます。私どもはそのような問い合わせの窓口となり、仕様や販売店の状況、供給できる国などを、日産自動車の工場の商品企画担当者に確認します。細かなところまで詰め、場合によっては商社のニーズにこたえられるよう調整を行ったりもします。日頃から、商社の方に日産車の良さや仕様についての理解を深めていただく取り組みも行っています。

工場とも連携して無事、開発途上国に救急車が届いたときの喜び

またNITCOが供給する日産車のほとんどは国内の工場で作られています。車の生産は通常、長期的な計画にのっとって進められていますが、コロナ禍での救急車両の需要増加のように、突発的な需要に対応したりするのは非常に難しい側面があります。そのため工場の窓口となる生産課の方とは、日頃からコミュニケーションを密にしています。部品の在庫状況など工場の生産状況を日頃から把握しておき、大口案件の場合は早い段階から情報を伝え、調整してもらうなど、必要台数を納期内に確保するための努力をしています。

このように商社や日産自動車のみなさんと連携しながら、国連・NSCチームの中で仕様を詰め、価格を決定した車両が落札されたときは、やはりうれしいですね。大使館の発表やニュースなどで、携わった救急車が開発途上国に届き、現地の人が喜んでいる姿を見ると感慨深いものがあります。微力ながら、NITCOの携わったプロジェクトで多くの患者さんが救われているのだと思うと、次の仕事への大きなモチベーションにもなります。

より多くの国に必要とされる車両を届けるために

今もコロナの感染拡大が広がるなか、救急車を必要としている開発途上国はまだ多くあります。そのような国への車両の供給は今後も引き続き行っていきます。今後も求められる車両を確保していくことは大きな課題ですが、引き続きニーズに対して、タイムリーに車両を確保できる最大限の努力を続けていきます。

また今後は脱炭素の流れから、ガソリン車のニーズは減っていくことが考えられます。来るEV時代にむけた準備も進めていく必要があります。そんな自動車業界の変化にも対応しながら、より多くの国に必要とされる車を着実に供給できる仕組みを整え、日本の開発協力にこれからも貢献していきたいと考えています。

関連する事業

自動車事業

国連機関、国連平和維持活動(PKO)、国際援助団体(政府機関・NGO)へ車両を供給することで国際社会に対して貢献を果たしています。また日産自動車の海外市場向け完成車のM&Sや物流手配、並びに試作車・研究車の物流トータルコーディネーションを通じてグローバルの日産車販売拡大に取り組んでいます。